序文・第5回
経営をしていると、
つい舵を取りたくなる瞬間があります。
この方向が正しい。
今は急ぐべきだ。
こうすればうまくいく。
そう思ったときほど、
自分が前に出たくなる。
けれど、
舵を取るという行為は、
一時的には楽ですが、
長く続けると、
組織を弱くします。
舵を取る人がいると、
周りは考えなくなります。
正解は、
上にあるものだと、
無意識に思ってしまう。
判断を待ち、
指示を待ち、
失敗の責任を、
自分から切り離す。
それは、
人が悪いのではなく、
構造の問題です。
ナビゲーターが
舵を取らないのは、
人を信じているからではありません。
考える余地を、
組織に残したいからです。
舵を取らない代わりに、
ナビゲーターが
やることがあります。
海を見る。
天気を見る。
船の状態を見る。
今どこにいるのか。
このまま進むと、
何が起きそうか。
それを、
静かに共有する。
情報が共有されると、
人は考え始めます。
考え始めると、
選択肢が生まれる。
選択肢が生まれれば、
誰か一人が、
舵を取る必要はなくなります。
舵を取らないというのは、
何もしないことではありません。
むしろ、
とても手間がかかります。
状況を見つづけ、
言葉を選び、
待つ。
待つことは、
逃げではありません。
判断を、
現場に返す行為です。
ナビゲーターは、
最終判断を、
奪わない。
間違えないように、
管理もしない。
ただ、
間違えても戻れる航路を、
先に用意しておく。
舵を取らないことで、
人は育ちます。
判断する経験が、
積み重なります。
それが、
組織の力になります。
ナビゲーターは、
前に立つ存在ではありません。
少し後ろで、
海と地図を見ている存在です。
舵は、
現場が取る。
ナビゲーターは、
航海が続くように、
環境を整えつづける。
それが、
舵を取らない理由です。
ナビゲーター

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